Тоҷикистон

タジキスタンという国

国土の9割が山。中央アジアでもっとも小さく、もっとも高い国です。言語の背景を知るために、その土地を見ておきます。

まず数字でBy the Numbers

正式名称Ҷумҳурии ТоҷикистонJumhurii Tojikiston
首都ДушанбеDushanbe
面積約14万3千平方キロメートル(日本の約4割)
人口約1,000万人
国語タジク語
通貨сомонӣsomonī
独立1991年
首都名の Душанбе は、 タジク語で「月曜日」を意味します。 月曜に市の立つ村だったことに由来するとされます。 数の ду(2)と шанбе(土曜)から成り、 「土曜から2日目」という組み立てです。

山の国A Country of Mountains

タジキスタンを一言で表すなら、山です。 国土のおよそ9割が山地で、 平地は西部の一部にしかありません。

標高備考
イスモイル・ソモニ峰7,495 m 国内最高峰。旧称は共産主義峰
レーニン峰7,134 m キルギスとの国境上

東部に広がるパミール高原は「世界の屋根」と呼ばれます。 標高4,000メートルを超える高地が続き、 氷河から流れ出す水は、下流の中央アジア一帯を潤しています。

山は交通を難しくします。 冬に峠が閉ざされ、村が孤立することも珍しくありません。 この地形が、言語の多様性を保ってきたという面もあります。 谷ごとに違うことばが残った理由のひとつです。

地域Regions

地域位置特徴
ソグド州北部 フェルガナ盆地の一角。古くからの都市が並ぶ
ハトロン州南西部 綿花などの農業地帯。人口が多い
ゴルノ・バダフシャン自治州東部 パミール高原。国土の約45%を占めるが人口はごく少ない
中央直轄地域中部 首都ドゥシャンベの周辺

北部と南部は山脈で隔てられており、 歴史的にも異なる経済圏に属してきました。 ことばの面でも、地域による違いがあります。 このサイトで扱うのは、首都を中心とする標準的な形です。

パミールの言語The Pamir Languages

東部のパミール高原では、 タジク語とは別の言語がいくつも話されています。 シュグニー語、ルシャーニー語、ワヒー語などで、 まとめてパミール諸語と呼ばれます。

これらはタジク語の方言ではありません。 系統としてはイラン語派の別の枝に属し、 タジク語とは互いに通じません。 同じ国の中に、千年以上前に分かれた親戚どうしの言語が並んでいる、 という状態です。

話者数はいずれも多くありません。 日常的にはタジク語も使われるため、 パミール諸語の多くは存続が危ぶまれています。 文字を持たない言語も含まれます。

言語の系統でいえば、タジク語はイラン語派の西の枝、 パミール諸語は東の枝にあたります。 ひとつの国の中に、この語派の広がりが凝縮されている といってよいでしょう。

歴史の層Layers of History

ソグドの時代

この地域には、かつてソグド人が住んでいました。 シルクロードの交易を担った人々で、 その言語であるソグド語は、中央アジアの共通語として広く使われます。 日本の正倉院に伝わる品々にも、彼らの交易網が関わっているとされます。

ソグド語は現代のタジク語の直接の祖先ではありませんが、 同じイラン語派に属する親戚です。 いまも語彙や地名に痕跡が残っています。

サーマーン朝

9世紀から10世紀にかけて、 ブハラを都とするサーマーン朝がこの地域を治めました。 この時代に、アラビア文字で書かれる新しい書きことばが花開きます。 いまの3つの標準語が共有する文語の出発点です。

通貨の名 сомонӣ と 最高峰の名イスモイル・ソモニは、 いずれもこの王朝にちなみます。 独立後のタジキスタンは、この時代を国の起点として位置づけました。 ソ連時代とは異なる歴史の語り方が選ばれた、ということでもあります。

ソ連期と独立

20世紀前半、この地域はソビエト連邦に組み込まれます。 共和国の境界が引かれ、言語に名前が与えられ、 文字が二度替えられたのはこの時期です。 くわしくは文字の変遷で扱いました。

1991年に独立。しかしその直後から内戦が起こり、 1997年の和平合意まで続きました。 多くの犠牲者と難民を出し、 国の再建はここから始まることになります。

内戦とその後の政治については、 評価の定まっていない部分が多くあります。 このサイトは言語を扱うものなので、 踏み込んだ判断は控えます。 関心があれば、専門の資料に当たってください。

暮らしと文化Daily Life

ナウルーズ

3月21日ごろ、春分に合わせて祝われる新年です。 イラン系の文化圏に広く共通する行事で、 タジキスタンでも一年でもっとも大きな祝日のひとつとされます。

お茶とパン

чой choy(茶)と нон non(パン)は、 客をもてなす場に欠かせないものです。 取っ手のない碗 пиёла piyola でお茶を飲み、 円い平たいパンをちぎって分けます。

パンには敬意が払われます。 床に置かない、裏返さないといった扱いがあり、 粗末にすることは強く避けられます。 食卓での振る舞いには、こうした感覚が反映されています。

出稼ぎ

国外で働く人が多いことも、この国の特徴です。 とくにロシアへ渡る人が多く、 その送金は国の経済に大きな比重を占めてきました。 タジク語の話者がタジキスタン国外にも広く存在するのは、 このためでもあります。