このページの読み方How to Read
ペルシア語やロシア語の知識がなくても読めるように書いています。 文法用語は初出のところで説明を添えました。
表記はキリル文字とラテン転写を併記します。転写は次の規則によります。
まず知っておくことBefore You Start
タジク語を学ぶうえで、最初に安心してよい点が3つあります。
名詞に性がない
ドイツ語やロシア語のように、名詞が男性・女性・中性に分かれることはありません。 すべての名詞が同じように振る舞います。形容詞も名詞に合わせて形を変えません。
格変化がほとんどない
ロシア語では名詞が6通りに形を変えますが、タジク語にはそれがありません。 「〜へ」「〜から」といった関係は、語の前に置く小さな語(前置詞)で表します。 日本語の助詞に近い発想ですが、語の前に来るのが違いです。
語順が日本語とほぼ同じ
動詞が文の最後に来ます。「私は/本を/読む」という並びは日本語と同じです。 ただし、修飾する語(形容詞・所有者)は名詞の後ろに来ます。 ここだけが日本語と逆になります。
| 日本語 | タジク語 | |
|---|---|---|
| 動詞の位置 | 最後 | 最後 同じ |
| 形容詞の位置 | 名詞の前 | 名詞の後ろ |
| 「〜へ」の位置 | 語の後ろ(助詞) | 語の前(前置詞) |
名詞Nouns
複数形
複数であることを示したいときは -ҳо(-ho)を付けます。 これがもっとも一般的で、どんな名詞にも使えます。
| 単数 | 複数 | 意味 |
|---|---|---|
| китобkitob | китобҳоkitobho | 本 |
| хонаkhona | хонаҳоkhonaho | 家 |
| шаҳрshahr | шаҳрҳоshahrho | 町 |
人を表す語には -он(-on)も使われます。 дӯст(友人)→ дӯстон(友人たち)。 文語的な響きがあり、-ҳо を使っても間違いではありません。
不定を示す -е
「ある〜」「1つの〜」と、特定していないことを示すときは -е(-e)を付けます。英語の a/an に近い働きです。 китобе(ある本)。付けなくても文は成り立ちます。
イザーフェIzofat
ペルシア語系の言語に共通する、核心といえるしくみです。 名詞の後ろに -и(-i)を付けて、 説明する語を後ろにつなげます。
基本の形
| 形 | 読み | 意味 | 組み立て |
|---|---|---|---|
| китоби нав | kitobi nav | 新しい本 | 本 + i + 新しい |
| шаҳри калон | shahri kalon | 大きい町 | 町 + i + 大きい |
| хонаи ман | khonai man | 私の家 | 家 + i + 私 |
| дари хона | dari khona | 家のドア | ドア + i + 家 |
書き方の注意
-и は前の語にくっつけて書きます。 前の語が母音で終わる場合は -и ではなく -и の前に й の音が入り、 хона + и は хонаи(khonai)となります。
鎖のようにつなげる
イザーフェ は続けて使えます。
日本語とは順番が完全に逆になります。 日本語で「私の/新しい/本」と並べるところを、 タジク語では「本/新しい/私」と並べます。 いちばん大事な語(本)が先頭に来ると覚えると分かりやすいでしょう。
目的語の -роThe Object Marker
日本語の「を」にあたる働きをする語尾があります。 -ро(-ro)です。 ただし、日本語の「を」とは使う条件が違います。
-ро は、その目的語が何を指すか はっきりしているときに付けます。 逆にいえば、特定していない目的語には付けません。
| タジク語 | 意味 | 説明 |
|---|---|---|
| Ман китоб мехонам.Man kitob mekhonam. | 私は本を読みます | どの本かは問題にしていない |
| Ман китобро мехонам.Man kitobro mekhonam. | 私はその本を読みます | 相手も知っている特定の本 |
代名詞Pronouns
| 単数 | 複数 | |
|---|---|---|
| 1人称 | манman私 | моmo私たち |
| 2人称 | туtuきみ | шумоshumoあなた・あなたがた |
| 3人称 | ӯ / вайū / vay彼・彼女 | онҳоonho彼ら |
ту と шумо の使い分けは、 日本語の「きみ」と「あなた」に似ています。 初対面や目上の相手には、相手が1人でも шумо を使います。
「〜です」To Be
英語の be動詞にあたるものは、独立した単語ではなく語尾として現れます。 文の最後の語にくっつきます。
| 人称 | 語尾 | 例 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 私は | -ам-am | Ман талабаам.Man talabaam. | 私は学生です |
| きみは | -ӣ-ī | Ту талабаӣ.Tu talabaī. | きみは学生です |
| 彼は | -аст-ast | Ӯ талаба аст.Ū talaba ast. | 彼は学生です |
| 私たちは | -ем-em | Мо талабаем.Mo talabaem. | 私たちは学生です |
| あなたがたは | -ед-ed | Шумо талабаед.Shumo talabaed. | あなたがたは学生です |
| 彼らは | -анд-and | Онҳо талабаанд.Onho talabaand. | 彼らは学生です |
この6つの語尾は、このあと動詞の活用でも同じ形が出てきます。 ここで覚えてしまえば、動詞の活用は半分終わったようなものです。
動詞のしくみHow Verbs Work
タジク語の動詞は、4つの主要形から組み立てられます。 この4つと、いくつかの助動詞の組み合わせで、すべての時制が作れます。
4つの主要形
出発点は現在語幹です。 そこから順に、残りの3つが作られます。
| 主要形 | хонданkhondan「読む」 | 作り方 |
|---|---|---|
| 現在語幹 | хонkhon | 動詞ごとに覚える |
| 過去語幹 | хондkhond | 現在語幹 + 過去を表す接尾辞 |
| 過去分詞 | хондаkhonda | 過去語幹 + -а |
| 不定形 | хонданkhondan | 過去語幹 + -ан |
2つの語幹
辞書に載っている形(不定形)は必ず -ан で終わります。 ここから -ан を取ったものが過去語幹です。 現在語幹は、そこからさらに形が変わります。
| 不定形 | 過去語幹 | 現在語幹 | 意味 |
|---|---|---|---|
| рафтанraftan | рафтraft | равrav | 行く |
| хонданkhondan | хондkhond | хонkhon | 読む |
| гуфтанguftan | гуфтguft | гӯ / гӯйgū / gūy | 言う |
| карданkardan | кардkard | кунkun | する |
| омаданomadan | омадomad | о / ойo / oy | 来る |
| доштанdoshtan | доштdosht | дорdor | 持つ |
| суруданsurudan | сурудsurud | сароsaro | 歌う |
人称語尾は3種類
語尾は3つの組に分かれます。 どの時制を作るかで、使う組が決まります。
| 人称 | I種 | II種 | III種 |
|---|---|---|---|
| 私は | -ам(-ям) | -ам | -ам |
| きみは | -ӣ | -ӣ | -ӣ |
| 彼・彼女は | -ад(-яд) | (付かない) | -аст |
| 私たちは | -ем | -ем | -ем |
| あなたがたは | -ед | -ед | -ед |
| 彼らは | -анд(-янд) | -анд | -анд |
| 使う時制 | |
|---|---|
| I種 | 現在形、未来形、仮定法現在形 |
| II種 | 過去形、未完了過去形、過去完了形、過去進行形 |
| III種 | 現在完了形、現在進行形 |
時制Tenses
4つの主要形と3種類の人称語尾がそろえば、時制はすべて組み立てられます。 まず全体を一覧にします。例は рафтан(行く)です。
| 時制 | 組み立て | 例(私は) | 意味 |
|---|---|---|---|
| 現在形 | ме- + 現在語幹 + I種 | меравамmeravam | 私は行く/行っている |
| 未完了過去形 | ме- + 過去語幹 + II種 | мерафтамmeraftam | 私は行っていた/よく行った |
| 過去形 | 過去語幹 + II種 | рафтамraftam | 私は行った |
| 現在完了形 | 過去分詞 + III種 | рафтаамraftaam | 私は行ってしまった |
| 過去完了形 | 過去分詞 + буд + II種 | рафта будамrafta budam | その時までに行っていた |
| 現在進行形 | 過去分詞 + истода + III種 | рафта истодаамrafta istodaam | いま行っている |
| 過去進行形 | 過去分詞 + истода + буд + II種 | рафта истода будамrafta istoda budam | その時、行っていた |
| 未来形 | хоҳ + I種 + 過去語幹 | хоҳам рафтkhoham raft | 私は行くだろう |
現在形
ме- + 現在語幹 + I種の語尾。 現在のことにも、近い未来のことにも使えます。日本語の「〜します」と同じ幅です。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| меравамmeravam | 私は行く |
| меравӣmeravī | きみは行く |
| меравадmeravad | 彼は行く |
| меравемmeravem | 私たちは行く |
| мераведmeraved | あなたがたは行く |
| меравандmeravand | 彼らは行く |
過去形
過去語幹 + II種の語尾。接頭辞は付きません。 3人称単数だけは語尾が付かず、過去語幹のままです。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| рафтамraftam | 私は行った |
| рафтӣraftī | きみは行った |
| рафтraft | 彼は行った(語尾なし) |
| рафтемraftem | 私たちは行った |
| рафтедrafted | あなたがたは行った |
| рафтандraftand | 彼らは行った |
未完了過去形
過去形の頭に ме- を付けます。 一度きりの出来事ではなく、続いていたこと、繰り返していたことを表します。 мерафтам(meraftam)。
現在完了形
過去分詞 + III種の語尾。 「〜してしまった」という完了を表します。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| рафтаамraftaam | 私は行ってしまった |
| рафтаӣraftaī | きみは〜 |
| рафтаастraftaast | 彼は〜 |
| рафтаемraftaem | 私たちは〜 |
| рафтаедraftaed | あなたがたは〜 |
| рафтаандraftaand | 彼らは〜 |
過去完了形
過去分詞 + буд + II種の語尾。 過去のある時点よりも前に終わっていたことを表します。 рафта будам(rafta budam)。
現在進行形
過去分詞 + истода + III種の語尾。 истодан はもともと「止まる」という動詞ですが、 ここでは本来の意味を失い、動作が続いていることを示す働きをします。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| рафта истодаамrafta istodaam | 私は行っている |
| рафта истодаӣrafta istodaī | きみは〜 |
| рафта истодаастrafta istodaast | 彼は〜 |
| рафта истодаемrafta istodaem | 私たちは〜 |
| рафта истодаедrafta istodaed | あなたがたは〜 |
| рафта истодаандrafta istodaand | 彼らは〜 |
過去進行形
現在進行形に буд を足し、語尾をII種に変えます。 過去分詞 + истода + буд + II種の語尾。 рафта истода будам(rafta istoda budam)。
未来形
хоҳ + I種の語尾 + 過去語幹という順です。 хоҳ は「望む」という動詞 хостан の現在語幹で、ここでは助動詞として働きます。 хоҳам рафт(khoham raft)。
命令形Imperative
命令形にあるのは2人称の単数と複数だけです。 単数は現在語幹をそのまま使い、複数は -ед を付けます。 どちらも頭に би- が付くことがあります。
| 不定形 | 単数(きみは) | 複数(きみたちは) |
|---|---|---|
| хонданkhondan | хон / бихонkhon / bikhon | хонед / бихонедkhoned / bikhoned |
| рафтанraftan | рав / биравrav / birav | равед / бираведraved / biraved |
| гирифтанgiriftan | гир / бигирgir / bigir | гиред / бигиредgired / bigired |
| хӯрданkhūrdan | хӯр / бихӯрkhūr / bikhūr | хӯред / бихӯредkhūred / bikhūred |
「〜するな」
頭に на- を付けます。 би- が付いている形なら、その前に置きます。
| 単数 | 複数 | 意味 |
|---|---|---|
| нахон / набихонnakhon / nabikhon | нахонед / набихонедnakhoned / nabikhoned | 読むな |
| нарав / набиравnarav / nabirav | наравед / набираведnaraved / nabiraved | 行くな |
仮定形Conditionals
「もし」を表す接続詞 агар で始まる文です。 実現しうる仮定と事実に反する仮定で、動詞の形が変わります。
1. 実現しうる仮定
агар + 現在語幹 + I種の語尾。 この形は仮定法現在形と呼ばれます。ме- が付かないところが現在形との違いです。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| агар равамagar ravam | もし私が行くなら |
| агар равӣagar ravī | もしきみが行くなら |
| агар равадagar ravad | もし彼が行くなら |
結果を述べる側には、現在形・命令形・未来形のいずれかが来ます。
2. 事実に反する仮定
агар + ме- + 過去語幹 + II種の語尾。 未完了過去形と同じ形です。 条件の側にも結果の側にも、この形を使います。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| агар мерафтамagar meraftam | もし私が行っていたら |
| агар мерафтӣagar meraftī | もしきみが行っていたら |
| агар мерафтagar meraft | もし彼が行っていたら |
分詞と派生形Participles and Derived Forms
4つの主要形からは、時制のほかにもさまざまな形が作られます。 形容詞や名詞として働くものと、 動詞の意味そのものを変えるものがあります。
過去分詞
過去語幹に -а を足した形です。 形容詞として使うときは修飾する名詞の後ろに置き、 名詞のほうに -и が付きます。 イザーフェと同じ組み立てです。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| дари пӯшидаdari pūshida | 閉められたドア |
| меваи пухтаmevai pukhta | 熟した果物 |
| гулҳои шукуфтаgulhoi shukufta | 咲いた花 |
| соли гузаштаsoli guzashta | 去年 |
| марди омадаmardi omada | 来た人 |
| тирезаи кушодаtirezai kushoda | あけられた窓 |
話しことばでは、過去分詞にさらに -гӣ を付けた形が使われます。 китоби хондагӣ(kitobi khondagī)、косаи шикастагӣ(kosai shikastagī)。
現在分詞
現在語幹に -анда を足します。 母音で終わる語幹には -янда です。 「〜している」「〜する」という能動の意味を持ちます。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| соли ояндаsoli oyanda | 来年 |
| марди гӯяндаmardi gūyanda | 例の人 |
| саги газандаsagi gazanda | かんでばかりいる犬 |
| 語 | もとの動詞 | 意味 |
|---|---|---|
| нависандаnavisanda | навиштанnavishtan | 作家(書く) |
| хонандаkhonanda | хонданkhondan | 読者・生徒(読む) |
| фурӯшандаfurūshanda | фурӯхтанfurūkhtan | 売り手(売る) |
| ронандаronanda | ронданrondan | 運転手(運転する) |
| намояндаnamoyanda | намуданnamudan | 代表(現れる) |
未来分詞
不定形に -ӣ を足します。 「〜すべき」「〜する予定の」という意味で、おもに話しことばで使われます。
| 形 | 意味 |
|---|---|
| гапи гуфтанӣgapi guftanī | 言うべきこと |
| хӯроки хӯрданӣkhūroki khūrdanī | 食べられる物 |
副動詞
現在語幹に -он を足します。 「〜して」「〜しながら」と、主の動作に付け加える働きをします。 日本語の連用形にあたる形です。
| 不定形 | 副動詞 | 意味 |
|---|---|---|
| тохтанtokhtan | тозонtozon | 走りながら |
| гап заданgap zadan | гапзанонgapzanon | 話しながら |
| ханда карданkhanda kardan | хандакунонkhandakunon | 笑いながら |
| рақс карданraqs kardan | рақскунонraqskunon | 踊りながら |
Бародарам тозон омад(Barodaram tozon omad)。「私の兄弟は走って来た」。 複合動詞から作るときは、名詞と補助動詞をつなげて1語に書きます。
受身形
他動詞の過去分詞 + шудан。 шудан(なる)が助動詞として働き、 時制はこちらを活用させて表します。
| 能動 | 受身 | 意味 |
|---|---|---|
| хонданkhondan | хонда шуданkhonda shudan | 読まれる |
| диданdidan | дида шуданdida shudan | 見られる |
| доданdodan | дода шуданdoda shudan | 与えられる |
| шуниданshunidan | шунида шуданshunida shudan | 聞かれる |
дида шудам(dida shudam) は「私は見られた」、 дида мешавам(dida meshavam) は「私は見られている」。 動作をした側は аз тарафи(〜によって)で示します。
使役形
現在語幹に -ондан を足すと、 「〜させる」という意味の新しい動詞ができます。
| もとの動詞 | 使役形 | 意味 |
|---|---|---|
| хӯрданkhūrdan | хӯронданkhūrondan | 食べさせる |
| нишастанnishastan | шинонданshinondan | すわらせる |
| пӯшиданpūshidan | пӯшонданpūshondan | 着せる |
| фаҳмиданfahmidan | фаҳмонданfahmondan | わからせる |
| расиданrasidan | расонданrasondan | 届ける |
前置詞Prepositions
日本語の助詞にあたる働きをしますが、語の前に置きます。 よく使うものは数が限られています。
| 語 | 読み | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| дар | dar | 〜に、〜で(場所) | дар хона 家で |
| ба | ba | 〜へ(方向) | ба Душанбе ドゥシャンベへ |
| аз | az | 〜から | аз хона 家から |
| бо | bo | 〜と、〜で(手段) | бо дӯст 友人と |
| барои | baroi | 〜のために | барои ман 私のために |
| бе | be | 〜なしで | бе об 水なしで |
疑問文と否定Questions & Negation
「はい/いいえ」で答える疑問文
語順は変えません。語尾を上げて言うだけで疑問文になります。 書き言葉では文末に疑問符を付けます。 はっきり示したいときは оё(oyo)を文頭に置きます。
疑問詞
| 語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| кӣ | kī | 誰 |
| чӣ | chī | 何 |
| куҷо | kujo | どこ |
| кай | kay | いつ |
| чаро | charo | なぜ |
| чӣ хел | chī khel | どのように |
| чанд | chand | いくつ |
疑問詞はその語が入るべき位置にそのまま置きます。 英語のように文頭へ移動させる必要はありません。日本語と同じ感覚です。
否定
動詞の頭に на-(na-)を付けます。 ме- がある場合は、その前に付いて неме-(nme-)という形になります。
| 肯定 | 否定 | 意味 |
|---|---|---|
| меравам | намеравамnameravam | 私は行かない |
| рафтам | нарафтамnaraftam | 私は行かなかった |